美しき姫君の半生

千姫の生涯

姫路城の美しさはいうまでもなく、名城としてもその名を世界に知れ渡っているだけの事はある。外観の白鷺を思わせるような白い城砦は見事といったところだ。世界各国に存在している城とは違った雰囲気がある日本の城は趣がある、日本人だからこそ感じるのかもしれないが見学をする機会に恵まれたら、筆者は興奮を隠しきれない。姫路城の美しさもいいが、そんな美しい城に見劣りしない姫君がこの城にいたこともまた史実として非常に有名な話だ。

この姫君のことを『千姫』と呼ばれており、千姫は本多家が国替えと共に姫路城主としてやってくる。ただこの千姫はとある人物の孫娘でもあった、彼女の祖父に当たるのはなんと『徳川家康』であり、彼にとっては可愛い孫でもあった。また彼女の家系的な流れから、祖母と母、共に戦国武将の間では有名な美女として、ありとあらゆる豪傑たちから求婚されていたことも有名な話だという。千姫も成長した美しさは世間を騒がせるほど美しかったと言われているが、彼女の人生は決して優しいものではなく、戦国の世に生を受けた姫君として生と死の戦場さえ経験していた。美しく、そして戦乱の世に翻弄された一人の女性、姫として生まれた千姫の行く末についても、姫路城が全ての始まりとなっている。

翻弄される姫君

身分制度がまだ存在しているこの時代において、祖父に徳川家康を持っていた千姫の立場は決して悪くないものだった。ただ彼女もまたそんな時代だからこそ様々な陰謀に巻き込まれることになる。その1つとして、わずか7歳で豊臣秀吉の子供である『豊臣秀頼』と婚姻をする。これ以前より婚約はしていたため、また2人ともがそれとなく顔見知りだったことも影響しているだろう、特に秀頼は僅か10歳ながら征夷大将軍と同等の権力を獲得していたこともあった。だが天下人としては若すぎたこともあって天下平定の争いから外れていくこととなる。千姫のことを考えればある意味正しい判断だったのかもしれないが、それで彼女が幸せを手に入れたとはいえなかった。

秀頼はその後大阪冬・夏の陣にて徳川家康と戦争をすることとなり、その過程で秀頼を始めとした豊臣家に関係する人間が全て死去、もしくは自害をしてしまう。この瞬間こそ豊臣家の滅亡を意味していたが、その中で千姫は巻き込まれることなく、祖父である家康の計らいによって合戦の最中で脱出していたのだ。元々、徳川家と豊臣家を取り持つための政略結婚だったが彼女の存在をもってしても両家が和解することはなかった。ただ千姫だけは家康にとって大切な孫娘だったこともあり、彼女だけは助け出すことに成功する。

その後、江戸へと帰郷する最中で本田家の嫡男である『本多忠刻』と出会い、そして恋に落ちた。彼女のことを考えれば無下に出来ないとして、家康は千姫と忠刻との婚姻を許可し、二人は結婚することとなった。その後2人はこの記事のテーマになっている姫路城へと入城し、一男一女の子供をもうけるのだった。また千姫はその美しさから人々からは『播磨姫君』と呼ばれていたという。子供も生まれ、この先幸せな人生が待っているのかと思ったが、彼女に待っていたのは不幸の連続だった。

まずは長男が3歳で死亡し、その後夫の忠刻、姑の熊姫、母の江と身内だけでなく愛する夫さえ失ってしまう。ようやく掴みかけた幸せは、霞のように千姫の手からすり抜けてしまった。もはやこのままではダメだと残された娘を連れて本多家を出てしまう。その後祖父のいる江戸城へと戻ると、千姫は出家して『天樹院』と号す。その後は娘と二人暮らしをするが、その後父である徳川秀忠に娘を幼女に出し、そこから長い一人暮らしが始まる。夫と息子、そして最後には娘とも引き離される千姫だったが、彼女の人生はここで終わらない。

70歳の長寿でこの世を去る

千姫は70歳で死去していると史実に記録されている、この時代の人からすれば長生きと見て十分な年齢だ。娘と離れてから静かな暮らしが待っているかと思いきや、千姫は出家した後も何かと幕府の出来事に巻き込まれていく。大まかに挙げていくと、

  • ・家光の三男、綱重と家光の側室である夏と共に暮らす。これによって大奥における大きな権力を獲得してしまう。
  • ・越前松平家の婚姻に関して、嫁側である越後高田藩、そして自身の娘である勝姫に依頼されたことで幕府に対して介入を行う。

こうした出来事に巻き込まれているため、出家したとはいえど彼女が俗世間と直接的に関わらずともどうしてもあらゆる権力争いに巻き込まれてしまうなど、災難という言葉を使用すれば適切な境遇かもしれない。ただ1ついえるのは、元々温和な性格をしているとされている千姫にとっては平凡で、何処にでもある幸せな時間を手に入れることが出来なかった。

千姫のように時代という荒波によって自らの人生を翻弄され、望まぬ力と求めた幸せを手に入れることも出来ず、そして残されたはずの欠片さえ奪われてしまい、一人静かに余生を過ごすことさえできなかった人は多いはずだろう。有体に言えば千姫も犠牲者と考える事が出来るが、言い方としては正しくない。この戦国の時代だからこそ、どんな状況に見舞われてもそれが決められたことだと受け入れなくてはならない。今の時代における物差しで計ることは出来ないが、これがこの時代における常識だったんだと思って納得するしかないだろう。

天空の白鷺こと、国宝 姫路城とは

日本では国宝、世界では世界遺産として認定されている伝統文化遺跡である『姫路城』、その大天守部分を改修する工事『天空の白鷺』が2014年1月にその作業を終了した。来年の工事完了が待たれている姫路城は、今でも多くの観光客に愛されている観光地としても親しまれている。そんな姫路城について考察していこう。