悲しき恋人達の物語

身分違いの恋

姫路城に纏わる逸話としては千姫、皿屋敷といった様々な物語が語り継がれているが、そんな伝承的な物語において直接的に姫路城は関係していないが、姫路市を舞台とした悲恋もある。この話はただ愛する人と一緒になりたかった女性と、愛する事の意味を思い出させてくれた女性と共に生きようとした男性の物語だ。タイトルは『お夏・清十郎物語』で、悲恋として語り継がれている。皿屋敷のような怪談とも違い、また千姫物語とも異なるこのお夏・清十郎は誰もが好みそうな内容となっている。

簡単に人物紹介を兼ねてみると、こんな感じだ。

  • お夏:姫路のとある米問屋但馬屋の当主の妹であり、京の島原にいる太夫よりもその美しさは上を行くといわれていた美女
  • 清十郎:酒屋の跡取りだったが、遊女と心中事件を起こして感動されてしまい。但馬屋へと奉公に来た美男子

設定として2人はあたり決まっているような美男美女となっているのはある意味お約束だとしても、どちらも男性から見ても、女性から見ても見惚れるだけの美しさをもっていたことだけがポイントとしておく。身分こそかつての清十郎だったがつりあっていたが、問題を起こしてしまったがために下郎人として奉公していたため、お夏は当初彼のことを気に留めてもいなかった。しかし清十郎が奉公に来たことで、お夏と清十郎の運命は一気に加速することとなる。やがてそれはあらゆる絶望を突きつけられる結末が待っていた。

惹かれあう2人、逃避する2人

遊女と心中事件を起こした清十郎だったが、親族などの取り計らいによって何とか事なきを得ることとなり、その後世間のほとぼりが冷めるまで手代として修行することで禊とした。問題があったとすれば清十郎がどんな女性でも虜にしてしまうほどの美男だったこと、遊女と深い中になった数は計り知れないほどとも言われていた彼も、心中事件をきっかけにして恋の遊びには飽きを示していた。それどころか仕事に実直な姿勢を見せ、更に元々性根が優しく頭が良かったこともあり女性たちは清十郎を見ては色めき立っていた。

それだけの騒ぎを引き起こしていたため、当然そんな噂話はお夏にまで響き渡り、そんなに格好がいいのかと興味を持ち始める。この段階ではそこまで強烈な感情を持っていたわけではなく、ただ好奇心をくすぐられるようなモノでしかなかった。いつ頃から清十郎に対して本格的に恋慕を抱くようになったのか、それは清十郎が自らの帯びのくけ直しを女中の一人に頼む。そのくけ直しをしている最中、帯の紐を解いてみるとそこからは別の差出人となっている遊女からの、本気の想いを綴った恋文が大量に出てきたのだ。但馬屋で女郎として働いていた女性達は興奮し、それに惹かれるようにお夏にもその文面を見せる。そこからはひたむきに、ただ純粋に、遊女としてではなく、一人の女性として本気の恋心を伝えたものだった。これにより、お夏は清十郎に対して恋心を持つようになる。

またこの頃から清十郎もお夏に対して一人の女性として忘れていたはずの劣情を抱くようになる。何せ共に暮らしていたこともあって、二人が近づくのは時間の問題だったが、とある春の季節に祭りにおいて誰もいなくなった瞬間、タガの外れた2人は求め合うように激しく愛し合うのだった。しかしこれが後に来る破滅も意味しているなど、予想できなかっただろう。

清十郎の死、お夏の絶望

一線を越えてしまったお夏と清十郎は、そのまま飛び出すようにして駆け落ちしてしまい、姫路から逃れるようにして港へとその足を急がせるのだった。自分達のしている事は決して正しいことでは無い、だがもう離れることも出来ないと遠く離れた地で一先ず昼も夜も関係なく愛し合おうとお夏と清十郎は着の身着のままで逃げることとなる。ところが2人の望みは叶うことはなかった、出発寸前だった船に潜りこんでこのまま大阪へと向かおうとしていたはずが、乗船員の飛脚が忘れ物をしたとして一度は離れたはずの港へと逆戻りしてしまうのだった。その直後、逃げた2人を探して追ってきた但馬屋の使いにより2人は拘束されてしまい、お夏は籠の中へ、清十郎は縄にくくりつけられて拷問に近い尋問を受けることとなる。

ただ清十郎に降りかかってきたのはこれだけではなかった、なんと但馬屋からなくなった金銭を盗み出したという疑いをかけられてしまったのだ。これについては濡れ衣だったが、結局身の潔白を証明することも叶わず、清十郎はお夏と最後に一目会うことも叶わず処刑されてしまった。また、お夏は清十郎の死を直ぐに知ることはなく、知ったのは時間が経過した後のことになる。

その前から何とかもう一度会いたいと願い続けたが、誰に尋ねても清十郎の行方には口を噤んでしまい、どんなに探しても見つからなかったため、お夏の心はこの時点で擦り切れていった。そんな中、乳母が子供を諭す歌を聞いてはっとなり、問い詰めるとその乳母は何も言わなかったが代わりに、その目から涙をこぼす。それが何を意味しているのかお夏には分かった、分かってしまった。せめてこの不届きで清十郎が罰せられないように鳥は買ってもらおうとしていた彼女の願いは聞き届けられる以前に、既にこの世から人知れず消されていたことを知ったお夏は、絶望の淵に叩き落されてしまう。

愛しかった人の最期を見ることも出来ないまま、清十郎を失ったお夏の心は壊れてしまい、ただ一人姫路の街を彷徨っている姿だけが確認されていたという。

物語とはいえ、身分違いの恋によってその想いをたけらせることなく、そして叶うこともなく、また相手への陳情を入れることも出来ないまま別たれたお夏と清十郎の話を悲恋と解釈することも出来るが、一人の男との別れによって精神崩壊を起こした女性の姿は終盤ホラーのようにも感じられる。あくまで主観から感じられた感情なので、必ずしも誰もが共感するわけでは無いが、あまりいい話ではないことだけは確かだ。

天空の白鷺こと、国宝 姫路城とは

日本では国宝、世界では世界遺産として認定されている伝統文化遺跡である『姫路城』、その大天守部分を改修する工事『天空の白鷺』が2014年1月にその作業を終了した。来年の工事完了が待たれている姫路城は、今でも多くの観光客に愛されている観光地としても親しまれている。そんな姫路城について考察していこう。