皿屋敷の発端となった古井戸

播州皿屋敷のモデルとなった場所

城というものはとても広大だ、そして古くから生と死の隣り合わせの場所でもある。時に大勢の人間から攻められ、守るために相手を殺すことも正当化されていた時代があったこと、それがかつての日本にも存在していたんだと考えると、考えなくてはならない事は沢山ある。またこの時代の人々は現代の人々と違って、超常的な現象に対してひどく敏感だったとも言える頃だった。そのため、何か良からぬことが起きればそれこそ幽霊の仕業、神がお怒りになられているといったような、オカルト染みた話が当たり前のように信じられていた時代でもある。

今の日本人は人にもよるが、どこか信心からは遠ざかった宗教感を持っているといえる。持っていればそれに越したことは無いが、そうした現象を信じきっているとどこか危ない人だと見られることもある。世間体を気にする人であればそうした偏見に苛まれないようにするためにも、一般常識を身につけていく。最も常識という縛りがなくても、科学的に説明が付く現象にはそれとなく起承転結が固定されているため、このご時勢ではそこまで極端に神の存在を完全に信じているといったような人はいないだろう。

しかし人間は無いものに興味が沸くのも事実、またそこから何か恐ろしいものが生まれてくるのではと、どこかでひっそりと想像力が働く生き物だ。そして何故かは分からないが、怖いくせに怪談話などに興味を引かれるのも性というものなのかもしれない。それがなおの事気味が悪ければ悪いほど、人の噂話によって脚色が付けられていく。但しそこにも調べていけばそれとなく歴史的出来事へと繋がっていくため、そこから物語として発展させた昔の人々も中々にユーモラスなところがあったといえる。

ここで話すのはそんな怪談の1つ、姫路城の上山里丸と呼ばれているところにある古井戸から伝わった有名な『皿屋敷』について話をしていこう。

顛末として

皿屋敷といっても地域によっては様々な伝承が伝えられているが、今回は有名どころの夜な夜な皿を数えている女の亡霊がここぞとばかりに現れるというものだ。姫路市ではこの怪談のことを『播州皿屋敷』といっている、ちなみに江戸ではそれと似た怪談として『番長皿屋敷』がある。今回は姫路を舞台としている怪談について話をして行くが、まずは簡単に物語について説明していこう。

お菊と呼ばれた女性の末路

姫路城を舞台とした播州皿屋敷が成立した年度については、詳細は分かっていない。少なくとも江戸後期に書かれたモノで相当の脚色が付け加えられた物語といってもいいものだという。ただ当時の人々からすれば霊的なものを信じていた人が多かったことを考えると、成立した時に読んでいた人々はここぞとばかりに恐怖に苛まれていたのではないかとも考えられる。

そんな播州皿屋敷と呼ばれる物語のあらすじとは、姫路城をかつて歴代に渡って統治していた小寺一族の中でも9代目に当たる年代で起きたとされている。ある一人の家臣が城の乗っ取りを企ていたが、城代の家臣がそれに気付いたため、謀略の証拠を探らせるために自分の妾だった『お菊』という女性を謀反の疑いがもたれている家臣の家に、女中として忍び込ませた。

無事に潜入することに成功し、さらに暗殺計画の概要に関しても入手することに成功すると、実行された当日に見事野望を阻止することに成功する。ただ失敗したことで自分の回りに裏切り者、もしくは内通者がいると踏んで、家来の一人に身辺調査に当たらせる。その調査によってお菊の正体が暴かれることとなるが、調査した家来が当初からお菊に対して恋慕の情を抱いていたため、ばらされたくなければ自分と夫婦関係になれと迫る。しかしそれに対してお菊は拒否したことに立腹し、お菊が管理を委任されていた10枚そろえないと意味のない家宝の毒消しの皿『こもがえの具足皿』の内、一枚をわざと隠してお菊に因縁をつけ、最終的に責め殺してしまうのだった。そしてその遺体は伝説発祥となった井戸の中にほうり捨てられてしまう。

それからというものの、井戸から夜な夜な女性の皿を数える声が聞こえてくるようになったという。

モデルの1つであるお菊虫

この話はあくまで脚色されたものとなっているため、何処までが本当なのかは知ることは難しいが、人が死んだというのはあながちない話では無いかもしれない。ちなみにこの物語の結末として、最終的に謀反を企てていた一族は全て滅ぼされ、そしてお菊が死んだこと、井戸の中に葬られたことを知って、十二所神社の中にお菊を祀った『お菊大明神』なるものがあるとも言い伝えられている。

日本人にとって井戸というのは重要な生活用水を手に入れるためのものだ。ただそれは同時にいつしか恐怖の象徴として描かれることもあるが、何となくわかる気がする。井戸の中に葬られたといっても、その井戸が人知れず使われていないものであるなら誰に気付かれることもなくその死が忘れられたものとなってしまうこともあるからだ。そういう意味ではホラー映画の『リング』などは、日本人の心理的恐怖心を煽る意味で、貞子という井戸に打ち捨てられた女性の怨念が連鎖して人々を呪い殺す、というのも頷ける。どちらのフィクションでも同じだが、殺された女性は無念の内に死亡したという事実だけは間違いない。

しかしお菊に関しては後日談として少しばかり話が継続する、この出来事から約300年後にいつの頃からか大量に発生した奇妙な形をした虫が大量発生したという。菊の花のような黄色い外見に播州皿屋敷に登場するお菊が虫となって帰ってきたのではと誰かが言ったことで、いつしかその虫は『お菊虫』と呼ばれるようになったという。有名な皿屋敷の伝説にもなった古井戸、一度は見てみるのもいいかもしれない。

天空の白鷺こと、国宝 姫路城とは

日本では国宝、世界では世界遺産として認定されている伝統文化遺跡である『姫路城』、その大天守部分を改修する工事『天空の白鷺』が2014年1月にその作業を終了した。来年の工事完了が待たれている姫路城は、今でも多くの観光客に愛されている観光地としても親しまれている。そんな姫路城について考察していこう。