妖怪物語で語り継がれる姫路城

物の怪のせいにしていた

お夏と清十郎の話も見方によってはどことなく狂気めいたサイコっぽい話となるが、こういう話はリアルに存在している可能性が十二分にあるため、フィクションだろうと一言では片付けられないのが怖いところ。皿屋敷でもそうだが、その気になれば古井戸に死体を遺棄することも出来ると考えたらそれはそれで怖いが、こうなるともはや想像を逸したような内容になってきてしまうため、これ以上追求しないでおこう。むしろ今の時代で考えればまだこの世に存在しないという固定観念が知れ渡っている妖怪といった物の怪の類などのせいにすれば、まだ少しは面白みが増してくるだろう。

妖怪という単語を出した時点、というより姫路城も有に及ばず城といったものは何かと物の怪の類に取り付かれるといったのは、何となくお決まりだといえる。もちろん本当にあったかどうかはわからないのを前提としても、当時の人々にとって妖怪や霊といった存在は身近な存在だったと語られている。特に城は何かと妖怪やらの怪談では舞台として話に登場してくることも多い、元がかなりの広さを有していることも関係しているだろう。広いからこそ何処に何がいるのか分かったモノでは無い、そんな恐怖心を煽られるように登場する妖怪伝説だが、姫路城を舞台としたものの中では『長壁姫』が一番有名どころ。

この長壁姫は姫路城の天守に住んでおり、そこへ時として現れて城主に城の運命を告げていたという女性の妖怪だ。一見するとそこまで害をなす妖怪のようには見られないが、城がこの先どうなってしまうのかということについてはあまり知りたくもないところ。そういう時に限って悪い知らせとなりえるため、昔の人にとってみれば知りたくもないことを知らされる妖怪はあくまで悪として認定されていただろう。

ただ長壁姫は姫路城の中ではそれなりに優しい部類だろう、これ以外にも姫路城に纏わる妖怪怪談は存在しているので紹介していこう。

池田輝政を悩ませた妖怪騒動

まず最初に紹介する妖怪談は、姫路城を建設した池田輝政に関係する話だ。何とか無事に建築することに成功した姫路城だったが、そこでの生活が始まってから池田輝政を悩ませる出来事が頻発していた。それが妖怪だ、悪鬼に山伏、一丈を超えるような大入道が夜な夜な登場しては輝政の枕元に出現するというのだから、寝ている本人は落ち着かないだろう。その他にも置く女中の元に何かしらの溶解が現れたり、誰もいないはずの天守に灯りがつくこともあった。果ては誰もいないはずなのに、何処からともなく大勢の泣き叫ぶ声が聞こえてくるなど、散々な目にあっていた。

またそんな中である手紙が届けられる、それは輝政が天狗に取り付かれ、祓うには城の鬼門に八天塔を建造して第八天神を祀れば救われるといったような、狂言めいたものまで出現するようになる。この手紙に関してはどう考えても荒唐無稽すぎるのはいうまでもない、手紙に関しては放置することも出来たがそれで騒動が集結することもなかった。やがて広がり続ける妖怪騒動に輝政の体調も疲弊していくと、思い病気を患ってしまうのだった。

このままではまずいとして、家臣達は話をとりあえず信じることとして、その前に輝政が城内に刑部神社を建築したところ、つまり手紙の通りに鬼門に位置している場所へ八天塔を建設すると、輝政の病状は改善へと傾いていき、これによって妖怪騒ぎもようやく落ち着きを取り戻していく。これで妖怪騒ぎが終了するかと思いきや、まだまだ逸話は残されている

宮本武蔵の妖怪退治

次の姫路城における妖怪エピソードとして、木下家定が城主であった時代の頃のことだ。かの剣豪たる『宮本武蔵』が姫路に訪れた際、自身の存在を感づかれないように名前を隠して足軽奉公を行っていた。そうした騒動で宮本武蔵は平然と世中に仕事をしていたため、家老はその足軽は腕の立つ武芸者ではないかと感づかれてしまう。

こうした経緯から木下家の客分として取り立てられた宮本武蔵に下されたのが、妖怪退治だった。依頼を受けて天守に上ると、3階で凄まじいまでの炎に襲われ、地震の様な音と振動が押し寄せてきたので太刀に手をかけると異変はすぐさま収束する。次に4階へ上がると今度は同じような出来事に見舞われ、それをきっかけに天守頂上まで上り詰めるが、そこには誰もいなかった。結局朝方まで張り込んでいるが成果もなく、そのまま下りようとした時に宮本武蔵の前に現れたのが、先に紹介した長壁姫だった。元々、姫路城のあった場所は刑部神社が配置しており、神社こそ遷移したが依りしろとなる神はそのまま天守に取り残され、やがて姫路城の主として顕現したという。ただ彼女にも妖怪を払うことが出来ず悩んでいたところに宮本武蔵が登場したことで妖怪は追いやられた。

勇敢だった宮本武蔵に対して長壁姫は褒美として、宝剣『郷義弘の名刀』が残されていたと語られている。

この話では宮本武蔵が宝剣を手に入れる話と、そして長壁姫が実は悪霊ではなく、実は神だったということになっている。事実か否かはさておき、物語として考えれば少々物足りない展開だったと、個人的に物寂しい感想だけつけておく。

城は妖怪話の宝庫

お城といえば何かと妖怪に関連した話がそこかしこで題材として挙げられる。どうしてそこまでしてなのかだが、それは各地に残されている伝承として言い伝えらえた物語に感化されているからこそ、といったことなのかもしれない。宮本武蔵が登場する長壁姫との邂逅についてもだが、その他に泉鏡花が作り出した『天守物語』についても同様のことが言える。ただ今と違って異形の存在を身近に感じられていたのは、やはり近代以前の文化があったからこそといったものだ。

現代ではそうした話は大抵二次元、もしくはオカルト話といったカテゴリーでくぐられてしまう為、真実味からは一歩離れたところにある。ただこうした物語は本当か嘘か、といった決め付けをすることに意義を見出すのではなく、単純に読み物としての面白さが追求されていればいいのではと思う。面白ければそれでいい、今回はいくつか取り上げた中の一部となっているので、興味があれば調べてみるのもいいだろう。

天空の白鷺こと、国宝 姫路城とは

日本では国宝、世界では世界遺産として認定されている伝統文化遺跡である『姫路城』、その大天守部分を改修する工事『天空の白鷺』が2014年1月にその作業を終了した。来年の工事完了が待たれている姫路城は、今でも多くの観光客に愛されている観光地としても親しまれている。そんな姫路城について考察していこう。